再会
午前中はどうしても抜けられない仕事があったので、午後に御手洗と空港で落ち合う予定だった。ところが、僕が職場を出て電車を乗り継いでいたところに電話がかかってきた。車内で慌てた僕は、思わず電源を切ってしまった。乗り換え駅のホームから急いで電話をかけ直す
「も・・・もう着いたのか?」
「ああ、思ったより順調に着いた。ところで今どの辺だい」
「え、ああ。今乗り換えの駅なんだ。あと1時間位でそっちに着くけど」
「ふーんそっか。僕は今からエクスプレスで東京に出るからそっちで落ち合おう」
「え、ちょっと待ってくれよ。ここまで来たのに・・・」
「じゃ、もう電車出るから後で」
ぽかーんと開いた口のまま、しばし呆然としていたのだが、段々と怒りが込み上げてきた。それなら最初から東京で待ち合わせにしてくれ・・・。僕は小雨降りしきる鉛色の空を憎らしげに見上げた。
東京に着き、しばらくウロウロとしたのだが、夕方の混み合う構内では僕の居場所が無かった。しばらくは壁際で待っていたのだが、昼食を食べていないことに気付き急に腹が減ってきた。とりあえずパンを買って、東海道本線のホームのベンチで食べて待つことにした。流れる人の波を見送りながら、さっきより強くなった雨脚に明日も雨だろうかと心配になる。雨の中では出不精の御手洗が箱根観光に付き合ってくれるわけもない。何だかとんだ日を設定してしまったと少し憂鬱になってきた。
突然電話のベルが鳴った
「どこにいる?」
「やっと着いたのかい」
嫌味の一つも言いたい気分だ。
「・・に・・・だ。で、どこにいるんだい」
「?電波が悪いらしく良く聞き取れないんだけど、君は今どこにいるんだ」
お互いによく聞こえないらしい。
「僕は東海道線の7,8番ホームだよ。もしもしー」
「あ、わかった」
電話は一方的に切られた。
ホームと言っても、結構広いのだがどうするつもりだろうと思っているとまた電話が鳴った。
「前か後ろか」
「は?」
「だからー、電車の前の方か後ろなのかだけ言ってくれ」
「えーっと」
僕はきょろきょろと柱番号を探したのだが、どっちが前か良くわからない
「よくわからないんだけど・・・」
「わからない?!」
御手洗が苛々と電話口で叫んでいる。ため息混じりに
「じゃあ何か目印」
僕は近くの横文字の売店の名を上げた。
「まったく君ってヤツは」
振り向くと、懐かしい笑顔に僕はやっと再会した。